お菓子やパンを作って販売したいけど、
など、分からないことだらけでお困りの方がたくさんいらっしゃいます。
そこでこの記事では、
- お菓子やパンの販売に必要な「食品衛生責任者証」の取り方
- お菓子やパンの販売に必要な「営業許可証」の取り方
- 無許可営業の注意点
- 自宅をお店に改装するときの注意点(市街化調整区域について)
- 許可申請の手続き・流れ
の5つのポイントを抑えながら、お菓子やパンの販売に必要な許可と資格について解説していきます。
結論から言いますと、パンやお菓子の販売に必要なものは①食品衛生責任者証と②営業許可証の2つだけ。調理師免許がなくても開業できます。
ではどうすれば許可を取得できるのか、また「自宅で保健所の許可を取得できるのか」についても解説していきますので是非最後まで読み込んでみてください。
「食品衛生責任者証」を取る方法

パン屋お菓子の販売に必要な「食品衛生責任者証」とは?
まず「食品衛生責任者証」というのは、あなたが販売する食べ物の「衛生責任者」のことです。
(詳しくは【外部サイト】食品衛生責任者証とはをご覧ください。)
この資格を取るためには食品衛生協会が主催する衛生講習会の受講が必要ですが、受講さえすれば全員に資格が付与されます。
また、下記の資格を持っている方は改めて取得する必要はありません。
・栄養士
・調理師
・製菓衛生師
・と畜場法に規定する衛生管理責任者
・と畜場法に規定する作業衛生責任者
・食鳥処理衛生管理者
・船舶料理士
・食品衛生管理者、もしくは食品衛生監視員となることができる資格を有する者
出典:東京都保健福祉局
オーナー自身でなくても、たとえばご主人やご兄弟がこの許可証をお持ちで、その方を責任者として申請するのであればそれでもOKです。
食品衛生講習会の内容と受講方法・手数料
下の写真は、わたしが京都府で受けた衛生講習会の「受講修了証書」です。

【講習内容】
公衆衛生学1時間/衛生法規2時間/食品衛生学3時間|合計6時間
【受講料】
1万円程度(都道府県ごとに異なる)
【受講日】
営業許可申請の際に、各保健所から説明あり。
受講内容や料金は各都道府県ごとに多少違いますが、概ね上記と同じような中身だと思います。
なお食品衛生責任者証は全国共通で認められる場合が多いので、他府県ですでに取得済みの方は、その旨を保健所に申告してみてください。
いずれにせよ、食品衛生責任者証についてはつぎに解説する「営業許可証」の申請に合わせて、保健所からかならずアドバイスがありますので焦って取得する必要はまったくありません。
ご安心ください。
保健所の「営業許可」を取る方法

パンやお菓子の販売に必要な「営業許可」とは?
ではつぎに、営業許可について解説していきたいと思います。
営業許可証とは「保健所基準」をクリアした飲食店に対して、保健所からもらう許可のことです。
営業許可はたくさんの種類に別れていますが、お菓子やパンを販売する方に該当する許可は下記の3つのうちのいづれかになります。
- 菓子製造業営業許可証
- 飲食店営業許可証
- 喫茶店営業許可証
各許可証の中身と手数料について、簡単にご紹介しておきますので参考にしてください。
飲食店営業許可証に該当するメニューと手数料

【取得手数料】
16,000円程度
【有効期限】
5年|以降5年ごとの更新制
【該当するメニュー】
肉や野菜を使った惣菜系のパンやキッシュ。ご飯物、丼もの、お弁当、麺類など。アルコール販売が許可される場合もあり。
菓子製造業営業許可証に該当するメニューと手数料

【取得手数料】
14,000円程度
【有効期限】
5年|以降5年ごとの更新制
【該当するメニュー】
和菓子・洋菓子問わず、スイーツ系全般
喫茶店営業許可証に該当するメニューと手数料

【取得手数料】
12,000円程度
【有効期限】
5年|以降5年ごとの更新制
【該当するメニュー】
ほとんど調理を必要としない場合にのみ適用(トーストとコーヒーなど)
以上3つの許可のなかみを解説しましたが、あなたの売りたい商品がどの許可に該当するのかは、必ず保健所に聞いて確認しておきましょう。
細かな許可条件は保健所によって異なるため、思い込みで判断せずに必ず保健所で確認するのが無難です。
あなたが「許可申請する保健所」を調べる方法
つぎに相談すべき保健所の調べ方について解説します。
保健所というのは「管轄エリア」が決められていますので、「あなたのお店の住所地を管轄する保健所」に確認する必要があります。
管轄エリアは各都道府県の中でもさらに細かく分かれていますので、下記の方法で各自確認してみましょう。
東京にお店や工房を作る場合
東京はかなり丁寧なホームページが作成されています。
東京都内で出店を希望する方は【外部サイト】営業許可の相談先を参考に、相談すべき保健所を調べてください。
東京以外にお店や工房を作る場合
東京以外で出店したい方は【外部サイト】保健所管轄区域案内を活用し、「あなたのお店の住所地を管轄する保健所」に電話をしてみましょう。
開業の意向を伝えれば、あとは保健所の担当者が案内してくれますので、その指示に従ってくださいね。
保健所に無許可で販売するとどうなる?
では保健所に無許可で販売した場合、どうなるのでしょうか?
自覚がないまま無許可営業されているかたもいるかも知れませんが、多くは「売上としては大したことないから無許可でOK。」という勝手な理屈で正当化している人がほとんどのように思います。
ですが当然のことながら、許可取得に売上の大小はまったく関係ありません!
無許可で販売した場合に適用される罰則はありませんが、それによって失う「社会的信用」は決して小さくないはずです。
必要な手続きはきちんと行っておきたいものですね。
仕入れたお菓子を販売するのはOK?
あなた以外の方が「営業許可のある施設」で作ったお菓子を仕入れて販売する場合ですが、これについては一度保健所に確認したほうがいいかもしれません。
たとえば、包装済みのクッキーを仕入れて、包装のままお客さんに販売するのであれば許可や資格は必要ないと思います。
ですが、
- 生ケーキやタルトを仕入れて、それをお皿に盛り付けて提供する。
- ホールケーキをカットして、テイクアウト用の容器に箱詰めする
などの作業が加わると、おそらく営業許可が必要だと言われるのでは?とかんがえます。
ですのでどんな形であれ、食べ物を商品として販売する場合は一度保健所に確認するのが無難ですね。
自宅を改装してお店や工房をつくる場合の注意点

つぎに「自宅を改装してお店や工房を作りたいとお考えのかた」への注意事項について解説しておきます。
というのも自宅の住所(もしくは開業予定地の住所)が「市街化調整区域」に指定されている場合、その場所での商売が禁止される可能性があるからなのです。
市街化調整区域とは?
「市街化調整区域」というのは農林水産業に必要な田んぼ・畑・山などを守るため、意図的に市街化することを制限された地域のこと。
建物の用途を「住宅」から「飲食店やその他の商売目的の施設」に変更できない決まりになってるのです。
そこで自宅の改装を検討中の方は最寄りの土木事務所に問い合わせて、
- 「市街化調整区域」の指定を受けていないか
- お菓子の製造・販売など、飲食業を営んでもOKかどうか
について確認してみましょう。
土木事務所に聞いてみた!
この件について土木事務所としてはどのような見解なのか、問い合わせて聞いてみました。
例えば自宅を改装した施設を作るのであれば、
- 自宅のどの場所に
- どれくらいのスペースで
- どんなものをどんな方法で製造するのか
- 自宅で製造だけして、販売は別の場所(例えばマルシェとか)で行うのか
などの要望を細かくチェックしたうえで総合的に、かつ個別的に判断するものなので、一般的な話として「これだったら許可できる」という風にはお話しできません。
との回答でした。
一般化できる話ではないという回答でしたので、とにかく土木事務所で各自相談するしかなさそうです。
自宅を改装できない場合の対処法
自宅を改装できないとなると、お店の夢を諦めざるを得ない状況になってしまうかたもいるでしょう。
そんな方は「シェアキッチンサービス」を利用するという方法があります。
営業許可を取得済みの施設・設備を、必要に応じてレンタルできるというものです。
ご紹介したものは大手の会社が運営しているサービスですが、もっと小さな地域のシェアキッチンも見つかると思います。
必要な方は、このようなサービスの利用を検討してみてくださいね。
営業許可取得に必要な調理場・設備の作り方

出店予定地が市街化調整区域に指定されていない方は、営業許可を取得してお店や工房を持つことができるようになります。
では営業許可を取得するためには、具体的にどんなものが必要になるのでしょうか。
建物や設備の作り方について、ざっとご紹介していきたいと思います。
①建物の作り・構造・面積
- 清潔な場所で、丈夫な建物であること。
- 目的に応じた広さがあること。
- 自宅の一部を改造する場合は、施設と住居スペースは壁や扉などで仕切られていること。
まず施設の大きさは決まっていません。
明らかに無理のある広さ・構造でない限りクリアできると思います。
ただし自宅の一部を改造して許可施設を作る場合、住居スペースから壁や扉などで仕切られている必要があります。
自宅とお店(工房)は明確に分ける必要がありますのでご注意ください。
②床の材質
調理場は「流水で洗浄できる素材で作られている事」が必要です。
営業許可を取得するためには、水を流して洗浄できる素材で作られている事が必要ですので、フローリングや木材の床は許可されません。
タイル貼り、コンクリート、CFシートなど耐水性のある素材を施しましょう。
CFシートのサンプルを貼っておきます↑。
フローリングマットのようなものですが、これさえも許可されない場合もあるかもしれません。保健所に要確認です。
③壁・窓の材質、設置の高さ
床から1mほどの高さまでは、タイル張りやコンクリートなどの素材を施す事が必要。
床と同様、壁も耐水性のある素材でなければなりません。
ただし床から1mの高さまででOKです。
④洗浄用シンク2箇所
野菜や調理器具を洗浄するための設備としてシンクは2か所必要です。
洗浄用設備としてシンク最低2つ必要です。
ただし2台のシンクを置くのは大変なので、ほとんどの飲食店では2槽式シンクを設置されています。
目的としては1か所が食器や野菜の洗浄用、もう1ヶ所が熱湯消毒用です。
⑤手洗い専用シンク1か所
手洗い専用に使用する手洗い場が必要です。
先にご紹介した2か所のシンクとは別に、調理施設内に手洗い専用の洗い場を設ける必要があります。
この手洗い場は調理施設内に設置しなければいけないので、自宅の洗面所などほかの場所では許可されません。
⑥給湯設備
また蛇口から熱湯が出せる設備が1か所必要です。
お湯が出ない場合は別途給湯器を取り付けましょう。
以上が許可に必要な調理設備です。
なお、冷蔵庫・冷凍庫、物品収納ケース、ゴミ箱、照明など、飲食店として設置すべきものは当然備えておく必要があります。
いずれにせよ計画の段階で早めに保健所に相談しておくと、きちんとミスなく設計できるのでオススメです。
パンやお菓子の許可取得までの手続き・流れ

ではここで、営業許可取得にいたるまでの手続きの流れについてみていきましょう。
流れとしては下記の通りです。
- 最寄りの土木事務所にて、市街化調整区域に指定されていないか確認する
- 保健所に相談し、お店(工房)に必要な設備を確認する
- 申請用紙に記入し、保健所に提出する
- 保健所にて、完成したお店の設備チェックを受ける
- 合格の場合は2週間ほどで許可証交付
- 不合格の場合は内装設備を修正し、再チェックにて合格すれば許可証交付
- もらった許可証を店内に掲示し、営業スタート
念のため、ざっと流れをご説明しておきますね。
保健所や土木事務所に相談する
なんどもお伝えしていますが、まずは土木事務所や保健所に相談して開業の意思を伝えましょう。
相談は複数回必要になると思いますが、ここでしっかりと話しを聞いておくことで失敗なく開業準備が進むはずです。
申請用紙を保健所に提出する
次に必要書類の申請をします。
書類の申請のタイミングは保健所によって異なり、このあとの「お店の内装設備チェックの日」にまとめて書類を提出する場合もあります。
ここは各保健所の指示に従ってください。
保健所の手続きで申請する書類
保健所に提出すべき書類も、各保健所によって多少ばらつきがありますがおおよそ下記のような書類の提出を求められるようです。
参考程度にごらんいただき、実際の書類づくりは保健所担当者の指導を受けて仕上げるのが無難です。
- 営業許可申請書
- 営業設備の大要・配置図
- 営業の大要
- 食品衛生責任者の資格証明書類 など
なお、申請と同時に手数料の支払いが必要です。
押印のための認印も忘れずに持参しましょう。
保健所にて、完成したお店の設備チェックを受ける
お店の内装設備まで完成したら、ようやく保健所のチェックを受けることができます。
このチェックに合格すれば約2週間ほどで営業許可証が完成しますが、設備に不備がある場合は不合格になることも・・・。
その場合は指摘された部分を修正し、もう一度チェックを受けてください。
基本的に保健所の指示通りに設備が整っていれば、不合格になることはありませんが、なんども足を運んだり作り直すのは手間も時間もかかります。
一回で合格するためにも、保健所の許可条件はしっかり確認してから改装するようにしましょう。
さいごに|マルシェやフリマでは個包装と食品表示を!

以上がパンやお菓子を販売するために必要な許可と資格の取り方となります。
いろんな制約がありますので簡単に開業できるわけではありませんが、あなたの夢の一歩を踏み出す参考にしていただければ幸いです。
なお作った商品をマルシェやフリマで販売する場合には、個包装した上で販売してくださいね。
また製造元や使用された材料名、製造日、賞味期限など、保健所が定めた内容を商品ごとに添付しなければなりません。
この点も忘れずに出店しましょう!
それではまた☆